救急部 西村 健
「西村先生、ちょっと応接室に来てもらっても良いですか?」それはまさに青天の霹靂。森山くんからの連絡はてっきり患者の治療方針の相談かと思っていたが、集合場所が応接室?という疑問を抱きつつも、訪れた部屋は重苦しい雰囲気に包まれていた。
「テレビの取材?笑 そっかー、とうとうおれもテレビデビューかぁ!笑 散髪行かないとなぁ!笑笑 えっ?本当?汗 冗談ではなく?汗汗 本当にテレビの取材???」

重苦しい空気を打破しようとした空笑いは跡形もなく消え失せ、逆に応接室の空気を白けさせた。よく見たらF上さんと一緒に全く知らないおじさんも同席している。メガネをかけた真面目そうなおじさんだ。この時にはこの方が後に自分の家に取材に来て一緒に唐揚げを食べる朝日放送テレビの方(Tさん)であることなどは想像もしていなかった。
松山先生が以前お家を建てた際に縁あってTさんとお知り合いになったようで、今回は兵庫県災害医療センターの特集企画となったとのこと。企画のコンセプトは「兵庫県唯一の高度救命センター 家庭も大事にする救急医の特集」みたいな感じであり、ようやくここで「ほー、なるほど」となった。企画のコンセプトがたまたま西村にマッチしたため声をかけて頂いた流れとなる。しかしそもそも自宅まで来ることが前提の取材なので、自分一人で決定することはできない、しかし決断は迫られる。その場で奥さんに連絡を強いられ、電話すると「なにそれ??笑」当然のリアクションであり、粛々と説明する。「いや、テレビの取材で、救急の内容で、お家にも来たいって、、、」動揺しながら支離滅裂な内容を説明しているのが自分でもわかる。これが救急患者のプレゼンだったら上級医に怒られそうな内容であることは間違いない。「よくわからないけど、いいよ」奥さんからありがたい返事を頂き、あとは子供の返事を聞くだけ。「奥さんのOKは出たのですが、一度家に帰って考えさせて下さい」なぜなら昨今プライベートな情報が漏れることは安全上も教育上も良くないため、子供達から大反対をくらうことも覚悟していた。「やったー!」懸念とは裏腹に二つ返事ならぬ四つ返事くらいの勢いで了承が出たので、その場でTさんにメールをして取材快諾となった。
その後は皆様知っての通り、(カメラに映るため張り切っていることがバレないように撮影のちょっと前から)髪を切って髭を整え、マイクをつけた西村が病棟や初療室を騒がせていたわけである。幸いにも撮れ高が少ないという非常事態は避けることができ、それなりに患者さんも搬入もあった。コメントによる見事なアシストをしてくれたN谷くん、K川くんには感謝の限りだ、ありがとう。
病院での撮影も数日重ね、前述の通りTさんは自宅にも取材に来られた。とりあえず部屋はしっかりと掃除したが張り切りすぎても印象が悪いため、家族会議を重ねた結果夕食のメニューは唐揚げとなった。ホストファミリーをしている時期も撮影とタイミングよく重なり、アメリカから来た青年リバーにとっても西村家にとっても良い思い出となったのは間違いない。こっそりTさんに乾杯でビールを提供したのも決して賄賂ではない。子供達にはテレビにでることを決して友達に自慢するなよ、と釘を刺してはいたものの、放送前に数人のパパ友ママ友から「子供から聞いたんですが、テレビに出るって本当ですか?」とメールが来たのは言うまでもない。

肝心の放送だが内容の確認などは一度もなく、放送当日を迎えた。回診後にK田先生からのVTR振りで「本日6/11 ニュースおかえり18:30から!check it out!」と叫び早々に病院を後にして家で放送を待った。放送直前に投稿中の論文から受理拒否のメールが届くという災難にも負けず、冷や汗をかきながら放送を見終えた。無事に放送されたことが何よりであり、あの放送以来子供達の自分に対する眼差しが少し違ったような気がする。「家にいるパパ」から「テレビにも映った救急医のパパ」という思いを持ってくれているようで、「取材、受けてよかった」と心の中でガッツポーズをしているのは内緒である。また医療のことは全くに素人である岡山の両親にも自分の仕事を知ってもらえて、親孝行できたのではないかと思う。今はYou tubeのコメント欄に戦々恐々の毎日である。 最後になるが、今回自分が特集されたことへの驕りなどは全くなく、自分以上に診療や病院に貢献している方はたくさんいる。診療部だけでなく看護部、薬剤課ならびに放射線課、栄養課、事務やニチイ学館、掃除の方まで、たくさんの方々が協力して兵庫県災害医療センターは成り立っている。その中で自分が今回たまたま放送のコンセプトに合致し、チャンスを頂き皆さんを代表して兵庫県災害医療センターの特集をして頂いたことはとても誇らしく思う。放送を通じていつか「テレビやYou tubeを見てここを志望しました」と言ってくれる方に出会えたらこれ以上の幸せはない。そしてその時にはこう言ってあげたい、「ようこそHEMCへ、そして、おかえり!!」と。
100万回突破!!












