救急部 島津 和久
昨年2月から始まった新型コロナウィルス感染症の流行はこの4月に第4波として神戸市を襲いました。第3波と違い変異株が多い第4波では若年者も重症化する傾向にあり、神戸市内の病院が用意していたコロナ用病床は早々に満床となり入院待機患者が市中に溢れる事態になってしまいました。
私は4月22日から厚労省新型コロナウィルス感染症対策推進本部事務局の参与として大阪市保健所でのクラスター発生施設の対応に従事していましたが、神戸市の状況は大阪市より悪いとの情報を得て、4月26日から神戸市保健所に地域支援班として支援に入りました。
そこで見た数字は日常診療では信じられないようなものでした。病院内においてもすぐに対応すべき緊急性の高い低酸素を呈した方が多数、それもSpO2 80%台の方が入院できずに自宅で呼吸苦を呈しながら待っていると言うのです。医療先進国と思われていた日本で、それも地元神戸でそのような事態が起こっていることを知り驚愕しました。
病床拡充とワクチン接種が根本的な解決法ですが、すぐに達成できそうにありません。そのような中で中央市民病院のスタッフが往診を行い、酸素濃縮器を自宅に置いて回っているとの情報を得ましたので、すぐに保健所長に市中の中核となる病院に対して往診医療に協力していただけるよう依頼してもらいました。これに神戸日赤病院、川崎病院などが応じてくれ、神戸市全域の往診体制を確立できました。私たちは往診班に診ていただく陽性者の選定を含め後方支援を行いました。
また、クラスターが発生した老健施設においても多くの陽性者が病院に入院できず施設内で療養を余儀なくされていました。そこでは看護、介護の職員も感染し、入居者のお世話をする人も全く足りない状況でした。残念にも施設で看取りとなる方も日々出ていました。
私達はクラスター対策としてそのような施設を訪問しました。不安から過剰なPPEを装着している職員さんには不安を払拭するようなお話を交えながら正しいPPEの装脱着方法をお伝えしました。同時に、効果的なゾーニング法の考え方を施設管理者にお伝えし、施設の方と一緒にコロナに立ち向かいこれを一緒に克服する寄り添い型の支援に努めました。
5月下旬からはHEMCの診療部、看護部にも支援に加わっていただき一緒に施設訪問をしました。
大阪と神戸を合わせて45日間に地域支援班として一緒に活動した仲間と26の福祉施設3つの病院、2つの団体に訪問、指導を行いました。
医療監査や各種届出など、どちらかと言えば面倒なお付き合いの多い印象だった保健所でしたが、毎日通い、多くの保健師や行政の方と一緒に働いたことでその印象はすっかり変わりました。感染した方が病院に運ばれて来られるその前の段階で医療の防波堤となってくださっていることが重々わかりました。また、多くの老健施設では少ない人と物資で不安な中、入居者さんのために献身的に働く姿を見て感心するとともに、環境的に恵まれた病院の中で働くことがどれだけ有難いことかをひしひしと感じました。
第4波はどうやら落ち着いたようですが、第5波が来るかもしれません。そのためにも第4波で得た知見、経験は報告会や勉強会などで出来るだけ共有していきたいと思います。
最後に、長期にわたって病院業務を離れての活動でしたが、今回も病院業務を代行していただいたり、後方支援をしていただいたHEMCの皆さんにお礼を言いたい気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。