マンスリーへむく ―現場の声―:2016年11月

マンスリーへむく ―現場の声―:2016年11月

救急車同乗実習体験記 ~何とかあの子にカロリーを!~

救急部 村橋 一

 救急車同乗実習。普段は救命士さん達にHEMCへ来ていただいていますが、今回は救命士さんの仕事場にお邪魔させていただく事となりました
 御挨拶をし、着替えて署内を案内して頂きました。中央消防署は広い。研修医の時に実習で伺った消防署の3倍くらい広い。署内見学も一段落し、頂いたチョコレートをもりもり食べていたら鳴り響く出動指令。おう・・・。いきなりかい。なんてものものしいのだ・・・。もたもたと着替え、ヘルメットを引っ被り、いざ出動!

 82歳男性意識レベル低下。一軒家に到着し、玄関を開けると急勾配で狭く途中で折れ曲がった階段が2階へと続いていました。『ストレッチャーでは搬出できないけど、どうするんだろう』なんて思っていると、救命士さん達はおもむろに防水キャンバス地の担架を取り出し華麗に患者さんを坐位のまま屋外へ搬出。(恐らく)消化管出血で真っ白な顔色の方をテキパキと神鋼病院に搬送する手筈を整えていきました。3人で仕事を分担しながら情報収集をし、節目節目の時間をしっかり記入しながら、「患者症状申し送り書」をあっという間に埋めていく様は、正にマジックでした。
 その後も一過性脳虚血発作や交通外傷(軽症)、作り置きカレーを作ろうと野菜を切っていたら指先を切ってしまった女性、コンサート帰りに電車内で過呼吸になった女性、背中を打って3日間動けなかった女性等、症例はバリエーションに富んでいました。総数9例の出動に同伴させて頂きました。中央署に帰ってきた瞬間に出動指令が鳴り、もう一隊の救急車に乗り換え出動、なんて事もありました。2隊が交互に出動するとはいえ、なんて忙しい仕事なんだ!!三宮が近くて人口も多いので出動件数が多いのですね。おちおち寝てもいられない。そんな中でも、様々な主訴・社会背景を抱える患者さんを、それぞれ最適な医療機関に搬送できるようにしてらっしゃいました。プレホスピタルの段階から医療は始まっているのだなあと実感しました。

 まじめな(?)話はここまでにして、ここからは救命士さんから収集した雑学をば。病院へ搬入し終えて消防署へ帰還する道程は救命士さんとの雑談タイムになるわけです。普段から疑問に思っていた質問を投げかけてみました。その中の2つを御紹介します。

・神戸の救急車のサイレンの音色が欧米っぽい件

 実は神戸の救急車は名古屋の救急車が発しない音を発しています。救急車のサイレン、普通は『ピーポーピーポー』と表現されますよね。名古屋はこの音色のみなのですが、神戸は『ヴィーポーヴィーポー』っていう欧米で聞いたような音色も奏でています。さっすがオシャレな街、救急車も違うのねと思ったものです。最初は車両によって違うのかと思っていたのですが、使い分けている事が判明しました。『ピーポー』はハイトーンとして他車への注意喚起、『ヴィーポー』はロートーンとして巡行時と使い分けている (助手席に座る小隊長によって匙加減あるようですが) ようです。ロートーンの救急車が近づいてきても、車に乗っている時などは気付きにくいんだそうです。また、深夜の住宅街ではなるべく鳴らさず大通りに出てからロートーンを鳴らすというように使ってらっしゃるようです。

・救急車の燃費が気になる件

 同行した2隊とも、同乗したタイミングで給油をしていました。なんとも絶妙なタイミングで乗り合わせたものだと思ったのでどれくらいの頻度で給油するのか聞いてみると1日1回くらいとのことでした。思ったよりも頻度が多いと感じたので燃費を聞いてみると、なんと4km/Lくらいという衝撃の数字が飛び出しました。馬力が大きい故だとの事です。かつて車種によっては3km/Lを切ることもあったらしいです。中央署は街中にあるので出動件数は多いのですが、病院の数も多いので遠くまで搬送しなくても済むそうです。しかし地方の救急隊となると遠い病院に搬送することもあるため、走行距離が往復で200kmになってしまうこともあるそうです。

 着任して早々にチョコレート、夕食時にはコロッケと白飯と味噌汁、深夜にはお菓子といろんなものを分けていただきました。そんなにお腹減ってそうに見えたのかなあ・・・。きっと、なんとかこの子にカロリーを取らせないといけないと思われたのでしょう!
 同乗実習が終わった後にこんなペットボトルホルダーを購入しました。青い『活動服』とオレンジの『防火服』の2種類があってどちらにするか迷っていたのですが、救命士さんへのリスペクトとして『活動服』バージョンにしました。袖の部分をつなぎ合わせてぶら下げることも出来る優れモノです。
 結局、あんまり寝られなかったけど楽しく充実した実習でした。救急車雑学はそのうち試験かなんかに出ることもあるかもしれないのでよかったら憶えておいてください。普段、搬入で接する救命士さん達とお知り合いになる事が出来、そのお仕事を間近で見ることが出来た事はとてもよい経験となりました。そんなこんなでつらつら書いてきた体験記は終わりです。駄文におつきあいいただき、ありがとうございました。