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救命限界への挑戦—救命救急センターとして

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兵庫県災害医療センターの最大の特長は、実際は隣接する神戸赤十字病院と恊働・連携して患者さんに適切な医療を提供する一方で、入口を明確に分けていることで、ここが今はやりのERとは一線を画しています。何よりHEMC1階(初療室、CT室、アンギオ室、手術室)の構造がコンパクトで小回りが利き、かつ病院到着前、すなわちプレホスピタルの時点から救急隊やドクターカークルーによるトリアージ情報をホットラインで得ながら、最重症の場合には貴重な時間の短縮を最大限追求することが可能です。

その特長を活かす試みとして、HEMCの扱う患者の約4割を占める外傷症例のうち、多発外傷などにより出血性ショックを呈する最重症症例に対しての手術室あるいは血管造影室直入によるDamage Controlとそれを支える緊急O型輸血によるMassive Transfusion Protocol(MTP)、ならびに心肺停止に対する血管造影室直入によるECPR(PCPSを用いた心肺蘇生)の二つを紹介します。

ところで、高度先進医療の世の中では時間をかけてでも正確な診断と精密な治療方針の決定による根治が重視されますが、重症外傷ではそんな時間的猶予はありません。生理学的な異常所見、すなわちショックを見抜けば、正確な診断や根治はむしろ二の次とし、救命のためのDamage Controlといわれる応急処置を時間最優先で行うのです。具体的には、出血性ショックと凝固能の正常化を目的にMTPを来院前から発動しながら、手術室に直入させてのガーゼパッキング、あるいは血管造影室直入による動脈塞栓術などのIVRを施行することをいい、止血と集中治療により病態を何とか立て直すことができれば、二期的に根治的手術を行います。

一方、心肺停止症例の社会復帰を目指して、救急隊到着時心電図モニター上波形がVF、あるいは波形がPEAでも目撃者がある症例で、かつ虚脱からセンター到着までが45分以内を見込める心肺停止例に対しては、血管造影室に直接患者搬入し、ECPRを導入、心臓カテーテルによる原因精査と治療を行って心拍再開を得た後、低体温療法に移行するというプロトコールを導入、予後の改善にチャレンジしています。これまでの成績を分析した結果を踏まえると、pomp onまでに45分という時間の壁があるため、センター搬入まで時間を要する遠隔地での発症事案には残念ながら適応できませんが、これにより社会復帰例25%(2015~2019)を認めるまでになっています。

このような時間が最優先される治療遂行には、同じ目的に向かって行動できるチームワークが院内のみならず救急隊も含めて不可欠であり、日頃からシミュレーショントレーニングを繰り返しながら、本番に備えています。


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