専門的治療

専門的治療

概要

搬入件数

搬入件数

搬入件数:当センターの年間搬入件数は1,000件前後で、内因性と外因性が約半々です。当センターはウォークインの患者を受け入れていませんので、この数字は救急車による搬入件数とほぼ同義です。なお、外傷患者の半数はISS16以上の重症外傷です。

 

専門的治療

手術件数

JSA(日本麻酔科学会)手術部位の内訳(2019年度, n=456)

脳神経・脳血管

59

胸腔・縦隔

7
心・大血管 21

胸腔・腹部

4
上腹部 55
下腹部 28
頭頸部 9
胸壁・腹壁 58
脊椎 2
四肢・骨盤 207
その他 6
456

JSA手術件数:当センターの2019年度の手術件数は456件でした。このうち、災害医療センター麻酔科担当は403件でした。四肢・骨盤手術、開頭手術、腹部手術、体表手術が多くを占めます。また、緊急手術が235件(51.5%)と多いことが特徴です。

 

麻酔件数

JSA(日本麻酔科学会)麻酔法の内訳
  全身麻酔
(吸入
/TIVA)
全身麻酔
(吸入
/TIVA)
+硬・脊・
伝麻
硬膜外
麻酔
脊髄くも
膜下麻酔
伝達
麻酔
静脈
麻酔
局所
麻酔
その他
2015年度 379 56 0 19 34 5 16 1 510
2016年度 275 81 0 17 11 9 15 1 409
2017年度 320 107 0 11 13 3 3 2 459
2018年度 213 140 0 20 30 12 10 1 426
2019年度 239 167 0 9 26 5 9 1 456

麻酔件数:全身状態に応じて伝達麻酔のみで行い、全身麻酔を回避することもある。当センターの症例では硬膜外麻酔の併用が困難な症例が多く、近年は積極的に神経ブロックを併用して鎮痛をはかっている。

 

ECPR

ECPR件数
  2015 2016 2017 2018 2019
昏睡 2 2 6 7 6
死亡 18 20 15 18 8
社会復帰 8 7 7 4 7

ECPR:当センターでは開設以来、心肺停止症例に対して体外式心肺補助装置(V-A  ECMOまたはPCPS)を用いた、extracorporeal cardiopulmonary resuscitation(ECPR)を実施しており、社会復帰率25%と良好な治療成績を収めています。脳低温療法と緊急冠動脈造影/血行再建をバンドル化したプロトコールを採用しています。このような特に治療にスピードが求められる傷病は、当センターの最も得意とするところです。

 

CPAのTTM施行

Targeted Temperature Management
  2016 2017 2018 2019 2020
Total 12 8 13 10 11
うち低体温 11 6 6 5 3
転帰良好 8 4 4 2 5
不良 4 4 9 8 6

脳低温療法: 院外心肺停止症例の社会復帰率の向上を目指して、ECPR症例以外でも積極的にTTM(Tergeted Temperature Management)を実施しています。
33℃で24時間維持し、24時間かけて復温するプロトコールを採用しています。ECPRと同様に、緊急冠動脈造影/血行再建をバンドル化しています。

 

心臓カテーテル検査・治療

PCI件数
  件数
2016年 61
2017年 46
2018年 56
2019年 48
2020年 25

 

IVR件数

当院でのIVRは、神戸赤十字病院の専門科(循環器内科脳神経外科放射線科)を中心に救急医が共働して行っています。特に当院では外傷例が多いため、外傷の止血のためのIVRが多い傾向にあります。神戸赤十字病院の放射線科で一定期間研修を行った救急医と、放射線科医が協力して24時間IVRを行う体制が構築されています。また、心臓血管外科と放射線科による大動脈ステントグラフト術が施行可能であり、大動脈損傷や大動脈瘤破裂などの症例に対して、人工血管置換術や緊急大動脈ステントグラフト術が状況に応じて施行されています。

 

外科診療の特徴

Acute Care Surgery

Acute care surgeryとは、胸腹部を中心とした外傷手術Trauma surgery, 急性期外科 Emergency general surgery, 集中治療管理 Surgical critical careを行う外科領域の1つとして近年提唱されてきた概念です。おもに重症外傷、急性腹症等を担当します。当センターでは一次、二次医療機関では対応困難な重症外傷や急性腹症に迅速に対応しています。 

診療実績(2016~2020年)
  搬入数 外傷症例 ISS≧16

胸部

AIS≧3

腹部

AIS≧3

2016年

909件

429件 219件 130件 53件
2017年 998件 502件 227件 148件 70件
2018年 1113件 506件 248件 155件 72件
2019年 1084件 451件 203件 106件 50件
2020年 1222件 578件 273件 183件 53件

注:ISS(Injury Severity Score) AIS(Abbreviated Injury Scale)

 

2019年 NCD(National Clinical Database)登録内訳

臓器別
7
2
横隔膜 2
その他開胸 9
5
小腸 20
結腸 13
直腸 7
3
胆嚢 5
2
2
1
人口肛門造設 13
ガーゼパッキング 8
腹膜炎手術 3
その他開腹 8
軟部組織 29
熱傷 39
末梢血管 3
その他 2
183
外因・内因
外因 132
内因 51
183

2019年のNCD登録症例の内訳は総数183件でうち外因132件、内因51件と外因が多いのが特徴です。臓器別では腹部が90件と最も多く、熱傷・軟部組織その他が72件、胸部が20件でした。術式では重症外傷へのダメージコントロール手術としてのガーゼパッキングや、また内因性であっても下部消化管穿孔による敗血症性ショックなど全身状態が悪い場合は積極的にダメージコントロール手術を導入し、二期的に人工肛門造設や再建を行っています。

 

整形外科診療の特徴

一説には鈍的外傷症例の約70%が整形外科的外傷を伴っていると言われています。当センターには内因性、外因性疾患あわせて年間およそ1000件の搬入があり、その約半数が外傷症例ですので、概算すると年間300~350件の整形外科的外傷を伴う患者の搬入があることになります。当センターは3次救急を担う高度救命救急センターですので、ほとんどは高エネルギー外傷で、必然的に整形外科的損傷も重症度が高くなります。以下に当センターの整形外科診療の特徴をご紹介します。

Early total care と Damage control orthopaedics

長管骨骨折、殊に大腿骨骨折に対しては、疼痛や局所からの出血のコントロール、二次的な合併症の予防などの観点から、特に髄内釘の適応となる骨折においては積極的に緊急手術として即時内固定を行っています。このことによって体位変換が容易になったり早期離床が可能になり、呼吸器合併症や深部静脈血栓症などの周術期の問題を回避できると考えています。
しかし、重度の出血性ショックや重症頭部外傷、胸腹部外傷を合併している症例も多く、全身状態が不安定な場合にはさらなる侵襲を加えることを避け、待機的に治療することになります。このような場合にも、牽引(鋼線牽引など)や外固定(シーネ固定など)ではなく、創外固定器を設置して待機することを原則としています。待機的手術についても、全身状態が安定化すれば数日以内に行っています。

骨盤骨折

骨盤骨折

不安定型骨盤骨折はしばしば大量の後腹膜腔出血を伴い、重度の出血性ショックの状態で搬入されます。当センターではこのような場合、後腹膜へのガーゼパッキングとTAEによる出血のコントロールを優先し、その後に必要に応じて創外固定を設置してDamage controlを行っています。
その後、待機的に骨盤輪・寛骨臼骨折に対して積極的に内固定術を行っており、特に重症の寛骨臼骨折については、日本における骨盤骨折治療の第一人者の一人である岡山大学整形外科の野田知之講師を招聘して手術を行っています。

後方骨盤輪骨折である仙骨骨折については、我々が考案した脊椎後方固定用インプラントを用いた低侵襲な骨接合術を実践し、良好な成績を得ています。

脊椎外傷

脊椎・脊髄損傷に対しては、隣接し相互補助的関係である神戸赤十字病院整形外科の脊椎外科チームと連携して、可能な限り早急に手術を行うことを原則として対応しています。全身精査と初期治療、呼吸・循環が不安定となる周術期の全身管理を当センターで行い、手術については神戸赤十字病院でナビゲーションシステムを使用した後方固定術を主として行う体制をとっています。不安定性を伴う脊椎損傷においては、できるだけ早期に内固定術を行い、ADLの拡大を進めていきます。

頸椎脱臼においては、椎骨動脈損傷の有無を造影CT、MRアンギオなどで確認し、損傷が認められた場合には脳神経外科の協力を仰いでコイル塞栓を先行して行った上で整復を行い、遊離した血栓による脳梗塞の発生の予防につとめています。

切断肢

当センターでは四肢、特に手指の切断に対する再接着術を行っています。切断部の損傷状態や年齢、患者のADLやニーズを総合的に評価したうえで適応を決定します。手術に際しては、顕微鏡下に血管・神経を縫合することができます。
ただし、執刀可能な医師が限られるため、常時対応可能ではありません。

以上のような重症外傷症例に対し、兵庫県災害医療センター専従整形外科スタッフと神戸赤十字病院整形外科スタッフで連携して治療にあたっています。