センター紹介

センター長挨拶

兵庫県災害医療センターのホームページを訪れていただき、ありがとうございます。

兵庫県災害医療センター長 石原 諭

当センターは、阪神・淡路大震災の教訓をもとに自治体が設立する初の災害医療センターとして2003年8月に設立され、隣接する神戸赤十字病院とともに、兵庫県の基幹災害拠点病院に指定されています。災害医療対応を可能とするには日常の救急医療を充実させることが不可欠であり、平時においては神戸赤十字病院の支援を受けながら、30床の独立型高度救命救急センターとして重症に特化した先進医療を提供し、地域における救急医療の最後の砦としての使命を果たしています。

円滑な救急医療を実践するためには病院前から院内に至る一貫した質の高い医療の提供が必須です。ドクターカーや神戸市・兵庫県防災ヘリの救急運用など消防をはじめとした関係機関と連携しつつ、入院約千例の4割を占める重症外傷をはじめ単一診療科では対応しにくい集中治療が必要な複合病態に対して、チーム医療を展開しています。入院する全症例には救急部医師が担当として診療に関与し、いわゆるClosed ICUに近い体制をとっており、専門科との連携は良好です。

診療上の特長は、主に外傷に対するHybrid ER診療、ならびに体外循環ECMOを利用した心肺蘇生法(ECPR)と引き続く体温管理療法です。

外傷症例の過半数は重症で、防ぎ得た外傷死亡の撲滅と予測外生存症例(予測生存率50%以下の救命例)の更なる増加に取り組んでいます。Hybrid ERとは、CT、血管造影、蘇生手術を患者移動なく行える救急初療システムで、2017年、本邦6番目の導入となりました。小回りの効く小規模施設の特性を生かしてこのHybrid ERと専用手術室を最大限活用し、整形外科、脳神経外科、救急部Acute Care Surgery、麻酔科グループが外傷や急性疾患に対する緊急手術を担当しています。

ECPRは循環器内科の協力下、国内屈指の症例数を蓄積しており、多くの症例において体温管理と神経集中治療が実践されています。これらの複数診療科・多職種が関与する集学的治療により、約4人に1人が神経学的に大きな障害を残すことなく退院されており、これは院外心肺停止における平均的な社会復帰率を大きく凌駕しています。

一方、「災害」という非常事態に対しては災害救急医療情報システムを機能させながら、県内医療対応の司令塔としての責任を担っています。2004年の台風23号但馬地方洪水災害に始まり、JR福知山線列車事故、東日本大震災、福知山花火事故、京都アニメーション火災、西日本豪雨、九州豪雨、能登半島地震などの甚大な災害に関与し、得られた経験を活かしながらその責務を果たして参りました。2006年からは、東京の国立病院機構災害医療センターとともに日本DMAT隊員養成研修を西日本の拠点として担当しており、県内のみならず全国の災害拠点病院とともに大地震や大規模事故への災害医療に備えています。

国外の災害支援にも積極的に取り組んでいます。海外で大災害が発生した時にも、日本政府の派遣する国際緊急援助隊(JDR)医療チームやNPO災害人道医療支援会(HuMA)にスタッフを派遣して国際貢献の一翼を担っています。センター設立以来、2003年イランのバム地震から2023年のトルコ地震まで、計13件の災害に医師、看護師、ロジスティシャン(事務職員)を派遣しました。これら内外への災害対応を可能にしたのは、派遣されるスタッフのみならず、院内から活動を支える職員一丸となった努力です。その一助としての英語研修の機会もあります。災害医療を実践したいと思う医療者が働くには、絶好の職場です。

近年は教育研修、学術活動にも力を入れており、DMAT研修はもとより、広範な領域の学会・研究会、地域MCや外傷に関わる研修会等に非常にアクセスしやすい環境です。その結果2018年には学会発表107件、うち英語発表が24件、2018年以降2022年までの5年間で論文は91本(英文44本)という業績を残すことができました。

災害医療は救急医療の延長上にあるべきで、当センターはそのために恵まれた環境の下にあります。地域の皆様には高度救命救急センター、基幹災害拠点病院として事故や急病などまさかの時に信頼いただける医療を提供し、修練中の医療関係者の方にはCritical Care全般に関わる充実したトレーニングや専門的学術経験を通して更なるキャリアアップを実現できるよう、職員一同努力して参ります。

兵庫県災害医療センターを是非よろしくお願いします。


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